救急現場で「救う」とは？

こんにちは、学科長の大野です。

先日の台風２号による豪雨によって被災され

ました皆さま、ならびにそのご家族の皆さま

に心よりお見舞い申し上げます。

皆さまの安全と被災地の一日も早い復興を心

よりお祈り申し上げます。 

　

本日は私が民間の救命士養成専門学校に在学

中に「恩師」として崇めさせて頂いていた臨

床実習先のある先生（医師）との思い出話し

を紹介させて頂きます。

　

それは心肺停止で救急車で来院された中年男

性の蘇生行為後の出来事でした。

気になる方は「下記の（さらに・・・）」を

押して下さい！！

50代の男性。急性心筋梗塞による心肺停止で

救急搬送により来院され、必死の蘇生行為を

行いましたが、永眠されました。

　

そのとき、遅れて来院されたご家族の方で中

学生くらいの娘さんが「おとうさんなんか死

んでよ！っと言っちゃって・・・ほんとうに

ごめんなさい。」と号泣されており、原因は

病気であるのにタイミングとして気の毒とし

か表現できない場面でした。

　

翌朝、恩師が実習生である我々に教えて頂い

たこととして・・・

　

君たちは将来、救急救命士としてヒトをどの

ように救っていきたい？

　

比較的にシンプルな質問ではありますが、昨

日の件もあり、知識・技術・根拠を持った救

急救命士としてヒトの命を救っていきたいと

答えたところ・・・

　

残念ながら知識・技術・明確な根拠を持って

いる優秀な医師や素晴らしい救急救命士であ

ったとしても「一度、止まった心臓を再び動

かす」ことは至難の出来事だ。

　

救命率を向上させるために、多くの医師や医

療従事者が挑んで、必死の努力を積み重ねて

きた。これまでの結晶を以ってしても困難で

ある。・・・本当に難しいことだ。

　

これは提案であるが・・・

　

理想は眼の前の生命を救うことだが・・・

「助からない生命を救う」ことを心掛けてみ

ないか？　

　

当時、この考え方には驚きました。

個人的には心肺停止の傷病者を蘇生・社会復

帰させていくことが救急救命士の使命と思っ

ていました。

　

資格取得後、私なりに恩師の言葉を少しでも

把握して、救急現場に臨んでいたある日、残

念ながらお亡くなりになられた傷病者のご家

族からの感謝の言葉に微妙な変化を感じまし

た。

　

あれ？　

焦燥感の感じられる感謝の言葉じゃないぞ？

　

しかし、日常に発生した思いがけない突然の

心肺停止でご家族は泣いていましたが・・・

　

おとうさんも満足だと思います。

おとうさんも頑張って生きたかったと思いま

すけど・・・

ここまで精一杯、救急隊や先生（医師）たち

が頑張ってダメだったから納得できます。

　

救ってもらえて、ありがとうございました。

　

つぎの瞬間、本当にプロ失格ですが・・・

私もボロボロと涙が止まりませんでした。

　

救急隊員のみんなが汗だくで、お世辞にもカ

ッコいい姿ではなかったと思います。

個人的には最後までやり遂げた最高にカッコ

いい救急隊でしたけど！！

　

恩師の言葉が実感できた瞬間でした。

知識・技術・医学的な根拠・優しい言葉も大

事ですが、「救う」とは生物学的な生命の蘇

生だけでなく、「その方々の想いを救う」こ

とも大事であると感じます。

　

傷病者の方のいのちは救われませんでした。

でもご家族の方が「救ってもらえた」と実感

してもらえたことは嬉しかったです。

　

同時に一番、救われたのは・・・

ご家族からの感謝の言葉で救われた救急隊だ

ったと思います。

　

うまく言えませんが、救急救命士はヒトのい

のちを救う職業であると同時にヒトから救っ

てもらえる職業であると感じます。

　

お互いに救いの手を少しでも届くように伸ば

して、ギリギリの状況下で助け合う資格？

　

表現力に乏しく申し訳ありません。笑

　

いまだに恩師の言葉の正解は発見できていま

せん。しかしイロイロな場面で「救う」こと

の重要性を実感しています。